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「声で栄冠、甲子園司会~夢に限界はない~」
「読むラジオ」第10話
みなさま、こんにちは!岐阜新聞社の神保絵利子です。
ブログをご覧いただいている皆さん、お元気でしたか?「週刊ラジオ 聴く新聞」をお聞きいただいている皆さん、いつもありがとうございます。番組宛てにたくさん届くメッセージには季節の便りの写真も多くあり、ブログで掲載OKの快諾もいただきながら季節は夏から秋、冬、そして春へと歩みを進めてしまっています。ごめんなさい。今後はできる限り(せめて季節が変わらないうちに)ブログを更新していきます。
2024年最初のブログ「読むラジオ」は、3月17日に放送した
「週刊ラジオ 聴く新聞」 ~記事深掘り~ です。
あす18日、甲子園球場で開幕する春の選抜高校野球大会の開会式で、岐阜北高校2年生の古田桃香さんが岐阜県の高校生として初めて司会を務めます。3月13日の岐阜新聞 社会面 県政担当稲葉亮記者の記事でもお伝えしています。生まれつき視力が弱い古田さんは原稿を覚えることで困難を克服し、今回も読み上げる内容を頭に入れて臨みます。週刊ラジオ聴く新聞では去年の夏、全国高校放送コンテストの朗読部門で県勢53年ぶりの優勝を果たした古田桃香さんにスタジオで話を聞いています。「また出演してくださいね」の話が実現します。甲子園開会式での司会という新たな舞台に立つ古田さんに、稲葉記者とともに会いに行ってきました。
(古田さんへのインタビュー)
神保:甲子園での司会を前に今の心境、思いを教えてください。
古田さん:はい。「ひたすら楽しみ」ですね。緊張はするんですがその分やりがいがあります。全国大会で結果を残すぐらい放送が好きでがんばっているので、自分の好きなことでこうした素晴らしい式典に携われるのは二度とないようなことですし、あんな広い球場で話したことはないので、すごく楽しみですね。ひたすらワクワクしています。高校球児の皆さんが目指されてきた場所で、自分もその幕開けのお手伝いができるのは光栄です。
神保スタジオコメント
野球を見るのが好き という古田さん。甲子園の開会式の司会に決まったと知ったとき、「甲子園に行けるんだという感動がものすごくあった」といいます。
(古田さんへのインタビュー)
古田さん:1年前のWBCで感動し、その後も野球に興味を持つようになりました。野球にどはまりしています(笑)。プロ野球も夏の甲子園も見ました。高校野球独特の雰囲気、そこで負けたら終わってしまう。白熱した、一歩も譲らない、魂のぶつかり合い、気迫を感じます。歴史のある大事な大会が甲子園。そこに携われるのはすごくしあわせなことですし、同時にとても責任が伴うものだなと思いました。
神保スタジオコメント
古田さんは朗読と司会とで異なる表現の仕方、重ねる練習も工夫しています。
(古田さんへのインタビュー)
古田さん:朗読は読み聞かせみたいな感じで、目の前にいる人に語り掛けるイメージで読んでいて、声量とか腹筋の使い方もそのようにやっています。今回の司会は、たくさんの聴衆に広く響くようにという話し方なので、声のボリュームや腹筋の使い方も違って、苦戦しています。家の中だと近所迷惑になりそうなので母親の車の中で、いつも通りの発声練習を10~15分して…。原稿を読む練習は自分が納得いくまで30分~50分。あれだけ広い会場で話すのは初めてなので、どうしたら声が響くのかも試行錯誤しながらですが、イントネーション、声の高さなどを気にしながら毎日、練習しています。
神保スタジオコメント
屋外の広い会場でのアナウンス。マイクを通した声がどれくらい会場に響くのかはまったく分からない状況です。
(古田さんへのインタビュー)
古田さん:どれくらい響いてしまうのかは、むこう(甲子園)に行ってみないと分からないんですが、ちゃんと響いている声を聞きながら自分がどのぐらいのペースでしゃべったらお客さんが聞きやすいのかというのをむこうで、すぐにつかまなきゃいけないな、と思っています。
神保スタジオコメント
屋外で行われる開会式では、光の関係で見えづらくなるため、細かい文言や名前を繰り返し読んで覚えていると古田さん。
(古田さんへのインタビュー)
古田さん:覚えること自体は、そこまで覚えられないかもしれない という不安はなくて。何回も繰り返して読んでいるので、ある程度は頭に入っていると思います。覚えられないかもしれないという不安より、絶対に間違えられないという不安の方が大きいですね。
神保:以前ご出演いただいたときに伺ったときに印象的だったのが、「言葉の奥にあるものを大切にしたい。聞いている人に伝えるんだという部分をしっかり考えて表現している」ということでした。
古田さん:そうですね。話す上で一番大切なのは「聞いている人にどう聞こえるか」ということ。今回は司会進行なので、朗読と違って物語の奥にあるものを伝えるのではないですけど、選手宣誓や学校名など大事な情報をたくさん読みます。甲子園に行くために努力されてきた方の紹介をするので、(皆さんが)気持ちよくスタートが切れるように、最高の幕開けになるようにという気持ちで、全力で司会をしようと思っています。
神保:選手の方へのエールも含め、お話される方が話しやすい環境作りに努められると思いますが、古田さんを応援する人もたくさんいると思います。
古田さん:ありがたいですね。甲子園で司会をすることが決まってからたくさんの人からおめでとう、がんばってね、というメッセージがきてすごく支えになっています。自分らしくやってこればいいよ!と、言っていただけるので、話す上で大切にしていることを軸に、自分らしくがんばれたらいいなと思います。うまく読もう、上手に読もうとすると、自分の読み方がなんなのかを見失いやすくて。伝える目標を明確に持っているからこその表現がきっとあると思うので、作った声ではなくて自分の声で読む、自分の声で大切なメッセージを聞く人に届けることを意識しています。
神保スタジオコメント
開会式の司会は、全国高校放送コンテストのアナウンス部門の優勝者と共に2人で臨みます。古田さんは後半で、選手宣誓や代表者のあいさつなどの進行を担当するということです。
(古田さんへのインタビュー)
古田さん:前半と後半で分かれていて、私は後半を担当します。読み上げる内容としては、国旗や大会旗の掲揚や選手宣誓、代表の方のお話といった内容を進行します。前半を担当する人は入場するときの学校名の読み上げをメインで進行してくれます。
神保:進行時間などもあって、自分のペースだけでは進められないですよね。
古田さん:とてもリハーサルから緊張感のある現場だと思うので、(さっき)読み間違えてはいけないという話をしたんですが、それだけではなくて、場の状況もよんで、進めていかなければいけないので体力も使うと思います。
神保:自分の息も整えながら、周りの人との息も合わせながら、会場が一体になるといいですね。
古田さん:はい! そういう空気感を作れるようにがんばります。
神保:球場がどのような感じになるのか、私たちもたのしみにしています。「夢を持って努力することで、最高の景色にたどりつける」と以前、お話されていますが、最高の景色、いろいろとたどり着けていますね。
古田さん:私は生まれつき視覚障がいがあって周囲の人に比べてハンディがあるんですが、岐阜北高に入って、友達とか、先生方、部活の先輩、後輩、たくさんの人に支えてもらって、優しさに触れて、その中で部活にも集中して取り組めました。だから、放送をがんばることができました。素晴らしい結果を残すことができているので感謝しています。全国(高校放送コンテスト)で優勝したときも最高の景色だと思いましたが、今回もきっと言葉では言い表せないような経験がたくさんできると思うので、一つ一つをかみしめながらがんばりたいな、と思います。
神保スタジオコメント
抱負を含めながら古田さんからみなさんへのメッセージです。
古田さん:こういうすばらしい機会をいただいて甲子園で司会を努められることを光栄に思っています。現段階でもたくさんの人から応援のメッセージをいただいてすごく励みになっていますし、自分自身、今まで練習してきた力を出し切って貢献できたらいいなと思っています。
私は生まれつき視覚に障がいがあるんですけど、甲子園の舞台に立てるということを通して伝えたいメッセージがあります。障がいを抱えている方、たくさんの壁にぶつかって苦しい思いもたくさんされていると思うんですが、多くの人に支えられながら一所懸命努力すれば、必ず夢をかなえることができるし、夢には限界がないと思っています。私が全国優勝という夢をかなえて甲子園で司会を務める姿を通して障がいとたたかっている方々に勇気を持ってもらえたらうれしいです。
障がいがない方にも伝えたいメッセージがあります。少し違う世界の人のように障がい者と健常者をとらえられている方もいるとは思うんですが、障がいがあっても一生懸命努力すれば、健常者ばかりの大会の中でもこれだけ高い結果を残すことができたという事実を知っていただきたい。壁をのりこえるためにがんばっている人がたくさんいる。障がい者の秘める可能性は無限にあるんだよ、ということを知っていただけたら-、そういう役割も背負ってあの場に立つ事ができたらいいな、と思います。
全力で一言一言を大切にお伝えして、その姿から多くの人に何か感じとってもらえるところがあればといいな、と思います。
一生懸命がんばるのでぜひ、応援よろしくお願いします。
神保:みんなで応援しています。
古田さん:ありがとうございます! がんばります。
神保スタジオコメント
甲子園の開会式で司会を務める岐阜北高校の古田桃香さんにお話を伺いました。
インタビューの収録後、古田さんは次のように話してくれました。
「私には安心できる環境があった。友達も先輩も後輩も先生も、障がいは気に掛けるけど、いい意味で障がいのことを気にしない。周囲の人のおかげで今がある」と。
去年の夏、古田さんと一緒にラジオに出演してくださった坪内有美子先生は「古田さんは優しい気持ちを持っているので、選手を応援する気持ちは絶対伝わる。伸び伸びとやり切り、思いを声に乗せて伝えてほしい」と古田さんにエールを送ります。
誰もが誰かの応援団!互いを思いやる気持ち、その思い、声を伝え合う。古田さんの声、思いは、甲子園だけでなく、たくさんの人の心に響くと思います。